【体験談】S-ICD(植込み型除細動器)を植込む方へ

  • はじめに

 初めまして。natsu7miと申します。2021年にCPVT(カテコラミン誘発性多形成心室頻拍)と診断され、S-ICDを植込みました。病気の経緯は後々記述するとして、この記事は、これからS-ICDを植込む方、あるいは植込みを検討している方の判断の材料となれば良いなと思って作成しました。つたない文章ですが、最後までお読みいただけますと幸いです。

※この記事に書かれている内容は、患者自身が把握している内容でありすべてが正確であるとは限りません。また、体験についてはあくまで個人の感想です。その点をわきまえたうえでお読みください。

 

※2021年5月21日更新(生活上のデメリット項目を追加)

 

 

 

 

  • 僕の病気(CPVT)について

 まずはじめに、S-ICDを植込むきっかけとなった僕の病気についてです。2020年12月、自宅の最寄り駅に向かって自転車を漕いでいました。最寄り駅での待ち合わせ時刻は19時、自宅で気づいたのは19時07分ごろでした。「相手を待たせている」と思った僕は、自宅から全速力で駅まで自転車を漕ぎました。自宅から最寄り駅まではおよそ1.1キロ、普通に自転車を漕いで5分ほどです。全力で漕ぐと3分ほどでつくことができます。駅は小高い丘の上にあり、駅に行くには250メートルほどの坂を上らなければいけません。その坂道を走っている最中に意識を失い倒れました。

 幸い近くにいた親子連れのお母様が心臓マッサージをしてくださり、消防署も至近距離にあったため、素早い対応をしていただけました。少しでも遅れていたら何らかの形で後遺症が、残っていたはずです。最悪の場合死亡していたかもしれません。

 搬送中の救急車の中でAEDを3回使用し、ようやく通常の心拍に戻ったようです。心臓マッサージをしてくださった方、救急隊員さま、本当にありがとうございました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 その後ICU(集中治療室)にて低体温療法などの様々な処置をしていただき、3日後に意識が回復しました。当時の診断は「蘇生に成功した心停止」でした。

 意識が回復した後、人工呼吸器が入れられていたのでうまく話すことができませんでしたが、2日ほどで元通り会話などができるようになりました。担当医は病名を調べるため、循環器病の専門病院である「国立循環器病研究センター」への転院を勧められ、年末年始を挟んでそちらに転院することになりました。

 転院先ではまず不整脈について検査しましたが心筋自体には異常がなく、電気的な問題があるとされ検査を実施したところ、CPVT (カテコラミン誘発性多形成心室頻拍)という病気が最有力ではないかという結論に至りました。この病気は、主に運動中などの交感神経緊張時に出るカテコラミンと呼ばれるホルモンにより心拍が早くなりすぎることで酸素を含んだ血液が脳に届かなくなり意識を失う、最悪の場合は死に至るという病気だそうです。(異なる点がありましても素人の考えと見過ごしてください、、、詳しくはウェブで)

 そんなわけで病名が確定し、治療が始まりました。現在は根本的な治療法がなく、先述したカテコラミンの分泌を抑える薬を飲むことで激しい運動をしても心室頻拍等が起こらないようにする、予防のような対処法しかありません。そのため、薬をきちんと飲まないと予防できなくなるうえ、大地震や大津波等の災害時に逃げる際、走ってそのまま倒れて死んでしまう可能性も捨てきれません。そこで異常な不整脈を検知し自動で電気ショックを行い、通常の心拍にもどす機能を持ったICD(植込み型除細動器)を植込むことを提案されます。(ようやく本題です。お待たせしました)

  • ICDとは

 ようやく本題です。ICD は、植込み型除細動器といい、早すぎる不整脈を治療するものです。このICDには2種類あります。

                 ・経静脈ICD(ペースメーカーのようなイメージ)

                 ・皮下植込み型除細動器(S-ICD)

 

いずれもほぼ同じ役割を果たしますが、いくつかの違いがあります。(詳しくは後述)

 

  • 2種類のICDの相違点とメリット・デメリット

 先ほどICDについて軽く説明しましたが、経静脈ICDと皮下植込み型除細動器(S-ICD)の相違点、メリット、デメリットについて 簡単に 記載します。難しく書かないよ!

 

■経静脈ICD

・鎖骨付近に埋め込まれ、血管の中にリード線を通し心臓のなかに留置される。ペースメーカー植込みと同じような感じ。

・メリット

心臓内に直接リード線(脈を検知する電線)を入れるため、不整脈の誤検知が起こりにくい。

  ・デメリット

心臓・血管内に直でリード線を入れるため、細菌がついてきた場合感染症になる場合がある。

 

■皮下植込み型除細動器(S-ICD)

  ・胸部左側(腋の下あたり)に埋め込まれ、胸部の皮下にリード線が入れられる。

  ・メリット皮

膚の内側に入れるため感染症のリスクが低い。

  ・デメリット

心臓の中に直接リード線を入れないため不整脈の誤検知が起こる場合がある。

 

特徴的なメリット・デメリットは上述の通りです。ただ、基本は医師の判断によると思われます。あくまで一部ですので参考程度にしてください。詳しくは担当の医師に確認してください。

 

  • ICDを植込むことによるメリット

 ・不整脈が生じたときに検知して電気ショックを与えてくれる。(これが一番です)

 

  • ICDを植込むことによるデメリット(生活上)

・IH炊飯器やIH調理機等を使うときには、植え込み部位を近づけないようにする必要がある(電磁波の影響を避けるため)

MRI検査を受けることができない場合がある(埋め込んだICDがMRI対応でない場合)

・電気風呂への入浴ができない

・携帯電話を使用する際は植込み部位から15センチ以上離して使用する。(シャツの胸ポケットなどに入れない)

・金属探知機を使用することができない(空港など)

・小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ等(特定小電力無線局のものを除く))は使用することができない。

・リュックサックが背負えない(S-ICDの場合)(植込み部にあたることがある)

・植込み後すぐに自動車に乗ると振動で機器が揺れる感じがして気持ちわるくなることがある。(S-ICDの場合)(1,2週間経てば固定されてきて感じなくなる)

・植込み後6か月間は自動車の運転ができない場合がある(詳しくは担当医師へ)

・植込み後の一定期間は公衆浴場の使用ができない場合がある(傷口から菌が入ることを防ぐため)(病院によってルールが異なる場合がある)

・植込み後1週間ほどは寝返りを打つことができない(痛むから)(個人の感想です)

 そのほかにも生活上注意しなければならない点があります。詳しくは植込みの際に確認してください。

  • 手術前、手術後の流れ

 僕の場合、手術は全身麻酔で行われました。目が覚めたら植込みが終わっていました。手術後、2時間ほど安静にして異常がなければOKです(病院によって異なります)。肝心の傷口の痛みですが、はじめ3日ほどは痛むので鎮痛剤を飲みました。4日を過ぎると痛みはほぼ収まり、時々痛む程度です。僕の場合は腹筋を使って起き上がったりすると傷が痛みました。2週間、1か月たつと全く痛くなくなり、普通の日常生活が行えるようになりました。傷口は手術後しばらくガーゼ等を使用することがありますが、2週間経つと傷口を覆うテープ等は使わなくても大丈夫でした。傷口ですが、4,5センチほどの大きさで結構大きい分類に入るそうです。また、埋め込み部の出っ張り感ですが、若い方だと皮膚が無理やり引っ張られる感がないのでパッと見は分からないかもしれません。傷跡を残りにくくするため、レディケア(Lady Care)という商品を使っています。シリコン製のパッドを傷口の上に貼り、傷跡への服の摩擦などを軽減するものです。単価は高いですが、洗って何度も使えるのでコスパは良いと思います。https://www.amazon.co.jp/Lady-Care12-11B3X10043000112-%E3%82%AE%E3%83%8D%E3%83%9E%E3%83%A0-Lady-Care12-%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B1%E3%82%A212-%E3%80%9012cm%C3%972-5cm%E3%80%912%E6%9E%9A%E5%85%A5%E3%82%8A-%E6%89%8B%E8%A1%93%E5%BE%8C-%E5%82%B7%E3%81%82%E3%81%A8-%E5%B8%9D%E7%8E%8B%E5%88%87%E9%96%8B/dp/B06Y2NMX77?th=1 

植込んだ機械の電池寿命は最長で7年といわれています。電池寿命が近づいてくると電池交換のため取り外して埋め込みなおす手術を行う必要がありますが、症状が軽減してきた、あるいは治療法が見つかった場合には新しく埋め込まないという場合もあります。

  • 精神的問題

 僕は19歳の時にICDを埋め込む判断をしました。生まれてこのかた体の中に機械を入れることなど考えたことがなかったので動揺もしましたし、入れずに済むのなら入れないでおこうかなとも思いました。ただ、今後もし同じことが起きた場合に無事に生還できるかわからないというリスクを考えた際、入れるべきなのかなと思い植込む判断をしました。まあ正直手術が始まるまではものすごく不安でしたし、決断をひとり悔やむこともありました。結局、手術後はもう開き直ってましたね(笑)。わりとそんなものです。なのでそんなに気負わずに手術に挑んでも大丈夫だと思います。

■まとめ

 植込む際は、メリット・デメリットをしっかり把握し、将来への影響を考えたうえでメリットのほうが大きいと考えられる場合は植込んだほうが良いと思います。若い人でも植込み人数は割と多いようですし、植込んでしまえば割と向き合えるのでそんなに気負う必要はないです。女性の場合はなかなか判断が難しいところですね。植込むと身体障碍者手帳を申請することが可能です。この記事が少しでもみなさまの決断のお手伝いすることができましたら幸いです。

■参考文献

 ・皮下植込み型除細動器(S-ICD)システムについて Boston Scientific

 ・ICD(植込み型除細動器)治療 5.使用上の注意Japan Lifeline https://www.jll.co.jp/patient/icd_precaution.html